電車で高齢者に席を譲るのは良いことなのか


 まず大前提として、
「電車に座ってるけど、自分より席に座るべき人が乗って来た!譲ってあげよう!」という、
他人のためを思った考え方や行動は、優しくて、キレイなものだと思います。
 タイトルのように思ったのは、介護分野における、「自立支援」という考え方によるものです。 


・自立支援とは

 簡単に言うと、身の回りのお世話を何でもかんでもしてしまうと、その人の「できる力」を奪ってしまうことになり、結果としてその人のためにならない。だから、その人の「できる力」を大切にしよう。自分でできることは自分でしてもらおう、といった考え方です。 

 そうすることで結果として、本人が元気でいられる期間が長くなり、介護といった社会の負担は減ることに繋がります。 


 ・「高齢者に席を譲ること」への一つの視点

  電車の中の話に戻ります。

 もしも、電車の中で高齢者に席を譲ることが当たり前で、社会の常識としてあるとしましょう。

それは、高齢者の立ち続ける機会を奪い、下肢筋力の低下を招きます。すると、歩行が困難になりにつれて次第に手助けが必要になり、介護の負担が増えることに繋がります。結果として、社会の損失を生んでしまうかもしれません。

 高齢者に席を譲るな!という話ではありません。高齢者も、若い人も、「できる力」を意識し、それを維持するように行動すると考えると、必ずしも高齢者に席を譲ることが正しいとは言えない、という一つの視点です。


・これからの超高齢社会

 余談ですが、 高齢者と思う年齢は、その人の年齢によってズレがあるようです。(下図参考)

 40~44歳の68.6%の方たちが65歳以上を高齢者と考えるのに対し、実際の65~69歳の方たちの72.5%の方たちは、70歳以上を高齢者と考えています。つまり、年齢が上がるにつれて高齢者と考える年齢も上がっています。

 長寿祝いは60歳の還暦から始まりますが、60歳はまだまだ高齢者ではない、と言う考え方の人が今後増えていくことが考えられます。良かれと思って、自分の思う「高齢者」に席を譲っても、相手は自分を高齢者と思っていないこともあるでしょう。 

 2025年には、日本の人口の4分の1が65歳以上となる「騎馬戦型」の社会になります。そして2050年には、現役世代一人が高齢者一人を支える、「肩車型」となると言われます。日本の超高齢化は避けられません。今、常識と感じていることも、今後どんどん変わっていくでしょう。 変わっていく世の中に対して、一つの常識に捕らわれず、様々な視点を持って問題に対峙していくことが求められますね。



(From としぱん)

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このマガジンは、物事を社会福祉的眼鏡から覗きます。 見る角度が異なれば印象も意味も変わってきます。 我々は、あえて福祉という偏った見方をすることによって、 福祉的アプローチがあるという気付きの価値を振りまきます。 社会の問題に関心を持つ人が増えて欲しいという願い。

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