アイドルは偶像ではなく人間になった pert1

 2010年代に全盛を迎えていたアイドルブームも近年では落ち着きを見せ、それに伴う問題が散見されるようになりました。

 今回のNGT48の事件のように、悪い意味で世間を騒がせることが増えました。その問題におおよそ共通しているのは、近年のアイドルは偶像ではなく、ただの可愛い(魅力的な)女の子に過ぎないという認識を持たない人が多いということではないでしょうか。ここでは女性アイドルを切り取ります。

 前提として、アイドルは「女学生のアイドル」と呼ばれたフランク・シナトラが起源だと言われています。つまり、初めは国外のスターをそう呼びました。

 その後、日本では60年代のグループサウンズ勃興に次いで、ジャニーズ事務所が設立され、それまでのタレントではなく、まさにスターを育成することを目的としていました。70年代から多くのアイドルが出現し、男性では、郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎から成る新御三家、女性では小柳ルミ子、南沙織、天地真理が新三人娘と呼ばれ、今日のアイドル歌手としての基盤を確立していました。


・元来、アイドルは偶像だった

 70年代は山口百恵、榊原郁恵や石野真子、80年代には松田聖子、中森明菜、小泉今日子など、今日に至るまで広く知られている名前が並びます。

 ジャニーズやキャンディーズ、ピンクレディーに代表されるような、複数人でのアイドルも登場しましたが、80年代は特にソロアイドルの時代が到来していました。その後、バラエティー番組から登場したおニャン子クラブの登場により、複数人のアイドルが再び脚光を浴びました。

 当時は、本人と接触できる場所は限られており、テレビで、ライブで、ポスターで「見る」こと、どれほど深い知識を有しているか、ということが「愛」を図る物差しでもありました。まさに見ることだけで心が満たされる感覚であり、定義上のアイドルという言葉が当て嵌まるように思います。可愛らしい女性であることは間違いないですが、どこか架空の存在のようで、それでも近くにいるような存在。そんな浮遊感がありつつも、いつか自分の学校に転校してくるのではないか・・・。そんな思いを感じました。

当時を知らない「私」の熱狂的なイメージ ©下野新聞 


おニャン子クラブが解散した後、しばらくアイドル冬の時代が続きましたが、楽曲に優れたモーニング娘。や、週末ヒロインとして圧倒的なライブを行うももいろクローバー、更に日本最大のアイドルフェスであるTIF(tokyo idol festival)の昨年の参加アイドル数は1315名であり、その他にも数え切れない数のアイドルが活動しています。


・アイドル信仰から、趣味の一つに

 読書が好き、鉄道が好き、お洒落が好き。そんな趣味の列挙にアイドルが自然に並ぶ時代が今です。もしかすると、80年代はそんな軽いものではなく、命さながら生き甲斐であり、生活であり、人生だったのではないでしょうか。

 アイドル選手、アイドルラッパーなど「アイドル的存在」の「的」こそが、偶像と人間の差異ではないでしょうか。身近な存在になったと同時に、軽い存在になったのではないでしょうか。

 次回、AKB48に関連するアイドルの変化について考察します。


今週の一曲

小泉今日子/水のルージュ



(from INO)

1992年生まれ、東京都在住。社会福祉学、統計学を専門とする。世の中の事象を社会福祉の目線から観察し、社会に貢献する機会と貯金の機会と旅行の機会を伺っている。最近はチーズがめちゃくちゃ好き。











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このマガジンは、物事を社会福祉的眼鏡から覗きます。 見る角度が異なれば印象も意味も変わってきます。 我々は、あえて福祉という偏った見方をすることによって、 福祉的アプローチがあるという気付きの価値を振りまきます。 社会の問題に関心を持つ人が増えて欲しいという願い。

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