アイドルは偶像から人間になった pert2

前回の続きです。

 アイドルは確かに偶像として崇められてきました。熱量は計り知れず、もしかしたら昨今より問題も多かったかもしれません。それでも、確かに酔狂とも言える信仰がそこにはありました。

 しかし、今ではアイドルはおおよそただの人間であり、ファンとの関係も異なるように思います。距離が近いから今の方が良いのか、と言われると疑問が残ります。物理的な距離で図ることはできず、ベタにいうと相手を思う気持ち、心の距離こそが全てではないでしょうか。



・「AKB商法」による夢の具現化と、失われた距離

 

 2000年代のアイドルを語る上で無視できないのは、やはり秋元康率いるAKB48でしょう。秋葉原というオタクの聖地にポピュリズムを持たせ、賛否両論ありながらも握手券システムの考案、専用の劇場、順列をつける総選挙など、ファンを熱狂させるギミックを多く生み出しました。アイドルに興味ない人間でも、一人くらいは顔と名前が一致すると思います。それはプロモーションの巧さ(狡猾さ)であり、メディアと相まって国民が熱狂しているような感覚に包まれていました。

 特に今日まで影響を及ぼしているのは、握手券システムです。1000円のCDを購入すると、10秒ほど握手ができる(いわゆる接触)というのは、まさにファンにとって夢の実現でした。

 これは昨今、どんな地下アイドルでも採用しており、CD不遇の時代に記録的なセールスを記録しました。

 2017年オリコンでは、1~9位までが48グループの楽曲であり、10位の嵐の倍以上の枚数を1 位のAKB48「願いごとの持ち腐れ」は記録しています。


 このシステムにより、神格化されていたアイドルと、一般人であるファンの距離は変化しました。テレビを見る、雑誌で見る、それよりも本人に会えるという革命的な出来事が起きました。ある種の距離感の崩壊により、アイドル像も変化したと言えるでしょう。

 今までの天上人から、近くの目線に降りてきたように思います。良し悪しは判断しかねますが、少なくとも、友達の方が近いような感覚が訪れています。

 そして、握手会を止めることはできず、今後のアイドルは楽曲のみで生き残ることが更に困難になることを意味しています。perfumeやももクロといった、飛び抜けたアイドル像、もしくはアーティストとしての何かを提供できなければ、天上へ行くことは不可能でしょう。

 パラダイム的に変化したアイドルシーン、ファンの在り方も変わり、趣味という枠の変化をもたらしました。今後、多くの変化が有り得る令和社会で、フォロワーも絶えず変化することが求められます。その変化の波に乗り遅れると、化石扱いされ、時代に置いていかれてしまうかもしれません。楽しいアイドルの一方で、事件が増えていることは、波の間に飲み込まれている人の存在を明らかにしてくれたのかもしれません。


今週の一曲

Tomato n`Pine / POP SONG 2 U



(from INO)

1992年生まれ、東京都在住。社会福祉学、統計学を専門とする。世の中の事象を社会福祉の目線から観察し、社会に貢献する機会と貯金の機会と旅行の機会を伺っている。最近はパキラがめちゃくちゃ好き。

ShearOnline

このマガジンは、物事を社会福祉的眼鏡から覗きます。 見る角度が異なれば印象も意味も変わってきます。 我々は、あえて福祉という偏った見方をすることによって、 福祉的アプローチがあるという気付きの価値を振りまきます。 社会の問題に関心を持つ人が増えて欲しいという願い。

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